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EMSと発送代行、どちらが自社に適している?判断基準とコストの仕組み

国際配送や大量の国内発送を扱う中小企業にとって、「EMS(国際速達郵便)」か「発送代行サービス(フルフィルメント)」かの選択は、月間数十万円の収支を左右する重要な判断です。しかし両者のコスト構造は根本的に異なるため、取扱量や利益率によって最適な選択が変わります。本記事では、実際のコストデータに基づいて判断基準を整理します。

EMSと発送代行サービスの基本比較

EMS(国際スピード郵便)の特徴

EMS(国際スピード郵便)は、日本郵便の国際配送サービスで、個別の荷物ごとに料金が決まります。アジア地域への500g以下の荷物で約1,400円、2kgで約3,300円といった単価制です。補償も無料で2万円まで付帯し、追跡サービスも標準装備。小ロットの国際発送や、顧客対応が必要な業務向きです。

発送代行サービス(フルフィルメント)の仕組み

発送代行サービスは、倉庫で商品を預け、受注から梱包・配送まで一括委託する仕組みです。Amazon FBAや楽天スーパーロジスティクス、民間の物流企業など複数選択肢があります。月額固定費+出荷件数に応じた変動費の構造で、取扱量が多いほど1件あたりのコストが下がります。

主要サービスの種類
  • □ Amazon FBA(ファルフィルメント)
  • □ 楽天スーパーロジスティクス
  • □ 民間物流企業の発送代行サービス

EMSと発送代行の比較表

項目 EMS 発送代行
料金体系 都度払い 月額固定+変動費
対応スピード 2~5日 当日発送可
補償 2万円まで無料 業者による
手続き シンプル 初期設定必要
向いている業務 少量・不定期発送 定期的・大量発送

コスト構造の徹底比較

EMS:わかりやすい都度払い

アジア向けの料金例

500g未満は約1,400円、2kg以下で約3,300円。月間100件を国際発送する場合、平均2kgなら月33万円の発送費が発生します。

EMSのメリット
  • □ 料金体系がシンプルで理解しやすい
  • □ 初期投資がほぼ不要
  • □ 出荷量が少ない時期の固定費がない
  • □ 追跡・補償が標準装備

発送代行:複合的な料金体系

一般的な料金相場

発送代行サービスの料金は複数の要素から構成されています:

  • 基本料(月額):3万~5万円
  • 入庫料:商品1点あたり10~30円
  • 保管料:1坪あたり月3,000~7,000円
  • ピッキング料:商品1点あたり10~30円
  • 梱包料:商品1点あたり100~400円
  • 配送料:1発送あたり400~800円
実例計算:月間200件の運用コスト

月3坪の保管スペースで月間200件を運用する場合:

  • □ 基本料:4万円
  • □ 保管料(3坪×5,000円):1万5,000円
  • □ ピッキング・梱包(200件×250円):5万円
  • □ 配送料(200件×600円):12万円
  • 合計:約31万5,000円

1件あたりのコストは約1,575円。月間100件なら約45万円になり、月間400件なら約65万円となります。出荷件数が増えるほど、1件あたりのコストは低下していく傾向にあります。

発送代行のメリット
  • □ 当日・翌日配送が可能で顧客満足度が向上
  • □ 在庫管理が自動化される
  • □ 発送業務の人件費削減が実現
  • □ 大量発送でスケールメリットが出現

判断基準となる3つのポイント

1. 月間出荷件数が分岐点

月50件以下のケース

EMSが有利。個別対応の手間も少なく、単価制のシンプルさが活きます。発送代行の固定費を上回るメリットがあります。

月100~300件のケース

検討余地あり。自社の正確な出荷パターンとコスト試算が必須です。発送代行は固定費が相対的に高くなり、EMSと同程度の費用がかかる可能性があります。

月300件以上のケース

発送代行が有利。スケールメリットが出始め、1件あたりのコスト削減と運用負担軽減の両立が可能になります。

2. 商品単価と利益率

高単価商品(5,000円以上)の場合

EMS活用が多い輸出ビジネスでは、商品単価が5,000円以上なら、発送費3,000円でも利益率は確保できます。EMSの単価制がコスト効率的です。

薄利商品(1,000円台)の場合

発送費が利益を圧迫する構造になります。発送代行で固定費を含めた効率化を図る方が有利な場合があります。

発送代行が有効な商品戦略

発送代行は、月間出荷件数が安定していれば、単価に関わらず効率的です。むしろ、受注処理やカスタマーサポートまでを委託できるため、低単価・高回転商品で人件費削減効果が顕著になります。

3. 成長戦略とスケーラビリティ

急成長を見込む場合

発送代行への切り替えを先制的に検討しましょう。月間出荷が100件から500件に増加する際、EMS対応だと発送業務が急速に複雑化します。発送代行なら、保管スペース拡張で対応でき、組織リソースをマーケティングに集中できます。

季節変動が大きい場合

発送代行の基本料が固定費になるため、売上が落ち込む季節に負担になります。この場合、EMS+アルバイト対応のハイブリッド型が現実的です。

意思決定チェックリスト

以下の項目に当てはまる場合、各方式が適しています。

EMSを選ぶべき

  • □ 月間出荷が100件未満
  • □ 国際配送がメイン
  • □ 出荷パターンが不規則で予測困難
  • □ 初期投資を最小限に抑えたい
  • □ 顧客対応を自社でコントロールしたい

発送代行に切り替えるべき

  • □ 月間出荷が300件を超えている
  • □ 毎月の出荷件数が安定している、または成長トレンドが明確
  • □ 発送業務にかかる人件費(時給850円×月50時間=月4万2,500円程度)がある
  • □ マーケティングや商品開発に時間を割きたい
  • □ 翌日配送など顧客満足度を高めたい

結論:段階的な判断と試算の重要性

「どちらが正解か」ではなく、「今のビジネス規模と成長予測において、どちらが効率的か」が判断基準です。月間出荷100~300件の企業は特に、実際の運用データを基に正確なコスト試算を行い、3~6ヶ月単位で見直すことが重要です。発送代行への切り替えは、単なる委託ではなく、事業成長を加速させる戦略的な投資と捉えることで、最適な選択につながります。

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